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CONVERSATION(三篇) [勝野睦人遺稿詩集]



   CONVERSATION(三篇)


   草叢


わたくしに

言葉を投げてくださるのでしたら

わたくしの居ない方角へ

できるだけとおく投げてください

そうして さらにできることなら

そのままさりげなくお立ち去りください

でなければ せめてもの目を伏せられて

見てみぬしぐさをなさってください



ーー言葉のとんだ草叢を わたくしが

捜しあてようとしてきょときょとするのを

   (そのさまはまるであなたの尨犬(プードル)のようです)



やがて わたくしは走り去ります

けれどももつれた足取りで

「答」を拾って帰ってきましょう



   坂道


わたくしの 「笑」の車輪は

           てぎわよく

ころがったためしがございません

あなたの おはなしの中途には

きまって傾斜がございますのに

坂道が こっそり仕掛けてございますのに

          そのうえを

いつでもわたくしはみにくくすべって

きまずげな 轍をのこしてしもうのです



わたくしの 「笑」の車軸は

どこにさびついているでしょうか……



   空地


「沈黙」は露路裏の空地です

ふいに 踏みこんだふたりでしたら

うつむいて 外套のえりもたてます

おたがいの靴音をきづかいながら

そしらぬ面持で ぬけでようともしますが



けっきょくは

どのような「言葉」を通りぬけても

おなじ空地が ひらけるだけだと

おなじ夕焼を もてあますだけだと

読みとってしまったふたりにとっては

「沈黙」はてじかな公園です



ふたりはこのんで迷いこみ

めいめいの 遊動円木をさがします












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