育男あて 一二・十三 (その1) [勝野睦人書簡集]
二日のお手紙拝見しました。御説はまずまず御尤もです。「まず
まず」と書いたことには意味があります。正直に言ってしまいまし
ょう。僕の詩に関する信念や理論は、僕が詩を書いている最中にし
かない。詩作から少しでも遠のいてしまうと、それらは壁土の落ち
た建物のように、骨組みばかりになって取残されます。骨組みしか
ない理論という奴は一番こわいーーそれはあなたもよくおっしゃる
ことです。
あの時は丁度詩が出来過ぎていた矢先で、それ故にあの説にも真
理があった。だが和尚さん<編集註・和尚さんとは石原氏のこと>
ところでお喋りした時から、どうもいけ
ない。詩が書けない。それであの説も雨晒しになり、透間風が通い
はじめたーーまあそういったところです。だからあなたの駁論に
も、「まずまず」と答えておく以外に手はありません。
以下、その2へ続きます。
便宜上わけさせてもらいました。
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