竹下育男あて 31・12・26 [勝野睦人書簡集]
(竹下育男あて)
こちらへ来て四日目から風邪にやられてしまって、お便りも出来
ず御無礼しました。一昨日からどうにかよくなりかけてきたので、
手はじめにペンをとったところが次々と詩が書け、われながらあき
れております。この年の暮はもう何も読むまいと思って、十四五冊
の本しか携えてきませんでしたが、その中から抜き出してみたのは
リルケの詩集だけです。但し「花の店」は汽車の中でみました。
「信濃」という散文詩がひどく気に入りました。”血管のようにさ
みしい鉄道地図を拡げると……”こういう憎らしくなるような詩行
があります。
なおロシナンテは、印刷所の方へ問い合わせたところ、二十日に
そちらへ発送したとか、正直なところ、まだよく読んでおりませ
ん。ここ四、五日位の間、そっと自分の詩の中にとじこもっていた
い気がするので……。では
31・12・26
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