竹下育男あて 32・1・9 [勝野睦人書簡集]
(竹下育男あて)
今僕のこころは、「無風状態」におちいっています。目をみはら
なくては物はみえない。耳をそばたてなくては音は聞えぬ。そうし
て無理をしなくては「考え」られない。無理をして遠いところまで
出かけなければ、言葉が得られぬーーまあそういった状態です。
だから詩なんぞ無論かけない。あなたのお手紙にも又御返事が出
来ない。(本当に申し分けがありません)ただ出来るのは絵をかくこ
とだけーーそれも野外スケッチです。
毎日山路をうろついています。
[×] [×]
これは一種の病気のようなものです。上京するころまでは恢復す
る見込み。又いやでも「言葉」に囲まれ、音を上げるはめ
となるでしょう。ーーあなたと同様……。では
ヘントウセン ハ ソノゴ イカガデスカ? 6日のサンチョノ
ヘンシューハ ウマクユキマシタカ
ナニカ イイホン ヨミマシタカ?
32・1・9
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