在間扶美子あて 三月八日 (その3) [勝野睦人書簡集]
僕は「秋の日」よりも「豹」の方が好きです。「豹」は新詩集中
の傑作でしょうね。「歌われた」というよりも「組み立てられた」
ような感じ。豹を外部から描写するのではなく、その内部を自己の
内部と重ねて描きだす方法ーーそれはロダンに教えられた
ものです。
リルケの「ロダン」をお読みですか。あれはロダン論というより
も、むしろリルケ自身の散文詩のようなものです。あれと「マルテ
の手記」を熟読してみると、リルケの住む「力学的空間が」きっと
直覚されます。もうそうなったらシメたものです。以前難解だと思
った一部の詩も、すらすらとあなたのこころに受け入れられるでし
ょう。だが、それは思ったより労力のいる仕事ですが。
今日はこの位にしておきます。なお御返事のおくれたこと、お詫
びします。さようなら
睦 人
三月八日
在間扶美子様
(追) ◇山登りーー本格的な(?)山登りはあまりしません。で
も、小さな山には登ることがあります。
◇木の葉の栞、ありがとう。
◇こちらには三月一ぱい居るつもりです。
(乱筆あしからず)
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