「こころ」は [勝野睦人遺稿詩集]
「こころ」は
「こころ」は 捨てられた小壜です
神さまのはげしい渇きのまえに
飲みほされてしまったなにかの 器……
だれのにも
ですから栓がございません
せめてもの
こんなしずかな夜更けには
その一本を拾いあげ
「ことば」の唇にあてがいましょう
「ことば」の口と
「こころ」の口とを
上手に 上手に競(せ)りあわせてみましょう
すると ほら
鳴るでしょう
おもいもしない笛の音が
どこからか ふいに澪れてくるでしょう
そして ほら
「こころ」は ひきつけたまるで赤子のように
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