穴 [勝野睦人遺稿詩集]
穴
わたしは そう
ひとつの穴だ
そうしてわたしの「言葉」は蜘蛛だ
一匹の 黒い蜘蛛だ
――ごらん わたしの口をごらん
それはいまでも巣を掛けて
巣は 無数の糸でふるえている
ふるえている なにかとおいものの気配に
風は時折
わたしのためにも枯葉を配るが
枯葉にどうしてできようか
この わたしの闇に舞い込むことが
残らずそれは絡んでしまう
・ ・
「言葉」の推理に絡んでしまう
そして ああ
枯葉自身の影だけが
かえってひとつの言葉のように
わたしの「喪失」の底へ落ちてくるのだ
そして そして
いっそうわたしは翳(かげ)ってゆくのだ……
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