わたしはひとつの……… [勝野睦人遺稿詩集]
わたしはひとつの………
わたしはひとつの落想でしょうか
あなたの手帖にかきとめられた
みしらぬ「運命」のための控でしょうか
「運命」が ふいにはばたいた折
つばさからこぼれおちたなにかのかなしみ
その ちいさなちいさなしみでしょうか
それともあなたのお顔のすみに
いつからかうまれでていた黒子でしょうか
わたしの出生をあなたはくやみ
正直にはもてあましてさえおいでの御様子
ああ それならば なぜ
なぜ あなたは
わたしを投げすててはしまわないのです
てのひらにのせた小銭のように
そうして忘れていた契約のように
わたしを「死」と ふいに
とりかわすのです
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