どこかのカフェーの隅っこで [勝野睦人遺稿詩集]
どこかのカフェーの隅っこで
ーー又は“カップとソーサー”ーー
涙を湛(たた)えたカップの、君の瞳(め)も、僕の瞳も小さな受皿(ソーサー)に過ぎな
い。
そんなに大きく見開いて、君の瞳が、どんなに僕に近寄っても、
僕の瞳と、君の瞳と、すっかり重なり合ったとしても……
受皿(ソーサー)の底と底とが擦れ合って、KIKIKI鳴るだけだ。
ーー止(よ)し給え、粗相したふりをして、わざとテーブルをゆさぶっ
ってこの僕の為に、受皿(ソーサー)を汚して見せてくれるのは……
お互のカップの口には、見えないハンケチさえ被せてあるのにー
ーその中に、まるで舶来のコーヒか密造酒(ムーンシャイン)でも忍ばせてあるよう
に……
× ×
いつの日だろうーー受皿(ソーサー)を離れたカップとカップが、僕等の頭上
で触れ合うのは……
’
(どこかのカフェーの隅っこで、そうやって、君と、僕とが、テ
’
レ臭そうに乾杯するのは……)
ーー今朝も又、僕の言葉が一雫、僕の知らない波紋となって、君
のカップに広がって行く……
2015-04-04 12:54
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