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どこかのカフェーの隅っこで [勝野睦人遺稿詩集]





   どこかのカフェーの隅っこで

     ーー又は“カップとソーサー”ーー


 涙を湛(たた)えたカップの、君の瞳(め)も、僕の瞳も小さな受皿(ソーサー)に過ぎな

い。



 そんなに大きく見開いて、君の瞳が、どんなに僕に近寄っても、

僕の瞳と、君の瞳と、すっかり重なり合ったとしても……



受皿(ソーサー)の底と底とが擦れ合って、KIKIKI鳴るだけだ。

ーー止(よ)し給え、粗相したふりをして、わざとテーブルをゆさぶっ

ってこの僕の為に、受皿(ソーサー)を汚して見せてくれるのは……



 お互のカップの口には、見えないハンケチさえ被せてあるのにー

ーその中に、まるで舶来のコーヒか密造酒(ムーンシャイン)でも忍ばせてあるよう

に……

  ×         ×

 いつの日だろうーー受皿(ソーサー)を離れたカップとカップが、僕等の頭上

で触れ合うのは……


                                    ’ 
 (どこかのカフェーの隅っこで、そうやって、君と、僕とが、テ

レ臭そうに乾杯するのは……)



 ーー今朝も又、僕の言葉が一雫、僕の知らない波紋となって、君

のカップに広がって行く……












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