竹下育男あて 31・11・24 [勝野睦人書簡集]
(竹下育男あて)
昨日パリー展を見てきました。ルノアールの「赤ネクタイの男」
が出ていますよ。あれはあなたのおっしゃる通り、実に素晴らしい
ものです。ただ、真赤な壁にかけてあるのでどうもよくない。他に
ドービニーのバカでかい風景が一点、それからピカソ、ドランなど
並んでいました。ああいうデパートの会場では絵はダメ、むしろロ
ココ朝の可憐な焼物なんかが、場所を得て光っていました。
× ×
また「旅人かへらず」を読みかえしています。同じ自閉症的な詩
境といっても、田中武などとは格段の違い。例えばこんな詩行で
す。
窓に欅の枯葉が溜る頃/旅に出て/路ばたにいらくさの咲く頃
/帰ってきた/かみそりが錆びていた
あなたは又、「描写」だとか「感想」だとか言われるかもしれな
い。しかしそういうことを言ってもけなしたことにはならない。何
故ならばと始めるとながくなってしまいそうです。この辺にしまし
ょう。
なお、例の「存在」の問題。あれからいろいろ考えてみました。
いつか機会をみてお話します。では
31・11・24
コメント 0